シンジケート近況

10チャレンジが挑戦艇を目指している

アメリカスカップへの挑戦艇を決めるルイヴィトンカップが始まるのは2002年10月1日ですが、挑戦するシンジケートは10になり、ルイヴィトンカップの予選ラウンドから決勝までのスケジュールも決まりました。今回は予選ラウンド2回が終了すると2シンジケート、ベスト8での準決勝が終わると半分の4になり、準決勝、決勝と数を減らしていき、チャレンジャーが決まります。敗者復活のシステムは少し複雑かもしれませんが、今までのような最初の予選ラウンドがあってもなくても良いみたいな練習レース期間がないので、長くだらだらしておらずにおもしろくなりそうです。

結局、ヨーロッパから7シンジケート、アメリカから3シンジケートになりました。オークランドではアメリカのワンワールド(シアトル)、オラクル(サンフランシスコ)、ヨーロッパのアリンギ(スイス)、ビクトリー(スエーデン)、GBR(イギリス)、プラダ(イタリア)の6シンジケートがディフェンダーのチームニュージーランドとともに南半球の夏を現地で練習に明け暮れています。9月から11月にかけて到着した後、春の激変する天気に悩まされ、ワンワールドはディスマストをし、オラクルはキールがとれて横倒しになったり、ディスマストと今ひとつですが、チームニュージーランドもアメリカスカップを勝ち取ったミレニアムリグマストを折ってしまい、散々なめにあっています。

オークランドに到着したら生卵をぶつけられるのではないかと噂されていたクーツ率いるアリンギチャレンジはスエーデンのビクトリーチャレンジとともにACボートの新艇を空輸してきました。ロシアのアントノフという貨物飛行機に載せて11月22日にオークランドに到着、現地でのテストを繰り返しています。

1月10日はニューヨーク・マンハッタンのど真ん中にあるニューヨークヨットクラブの前の通りでデニス・コナーのスターズ&ストライプスが命名式を行いました。ニューヨークは昨年9月の同時多発テロからの復興で頑張っていますが、その場所へニューイングランド造船所で建造した新艇を実際に持ち込み、道端でアメリカスカップをニューヨークへ取り戻すことを誓うというコナーの演出には何ともいえないショーマンシップを感じます。ボートの写真は撮ることを禁止していましたが、バウの先端が斬新的なへこみを見せており、幅も狭く見えたそうです。パトカーに囲まれた中での式でしたが、街中にヨットを持ち込んだ式は初めてのことでした。新艇はそのままトラックで5000キロの大陸横断をしてカリフォルニアのロングビーチへ運び、暫くはそこでテストをする予定です。コナーは2隻目の建造もする予定で、2隻目は夏に完成し、オークランドへ送ります。

フランスのル・デフィには新しく原子力発電で電気を供給しているアレヴァがスポンサーになり、チーム名もル・デフィ・アレヴァになりました。現在、フランス大西洋側のロリエンにベースキャンプを構え、69名が前回のACボートを使い、トレーニングしています。今回も本番直前のオークランド入りです。

イタリアの2番目のチャレンジャーは前回のプラダの活躍に引っ張られて新たに名乗りをあげたシンジケートですが、シンジケートヘッドのオノラトが自分のセーリングチームを中心にしてチャレンジをしようと決めたものです。92年にイル・モロを建造したテンカラ造船所で1隻を作り、本番にオークランドへ乗り込んできますが、これまではスペインから買ったボートを使い、イタリアのエルバ島でトレーニングしてきました。

ドイツのイルブルックはボートの設計、造船プログラムは進行していますが、セーラー達はボルボ・オーシャンレースでオークランドを通過しました。ドイツは今回のチャレンジは土台作りで、その次が本当の挑戦だと考えており、ボルボオーシャンレースのチームが中心となって本番レースには間に合わせてくる予定です。

今オークランドにいて、2ボートでテストをしているチームが有利に思えるところですが、初挑戦ながらもマイペースで着々と準備を進めているイギリスのGBRチャレンジがおもしろいと思います。ACボートの経験こそ少ないかもしれませんが、研究熱心で、ひとつのヨットプロジェクトとして取り組む手法はオリンピックキャンペーンをそのまま持ち込んだような形で、期待したいです。デイブ・バーンズのAC経験、ニッポンチャレンジのボートと機材を買い込んでの準備、韋駄天から得たボートパフォーマンスの感触。変なところで団結するイギリス人の良さがでれば、かなりのダークホースだと思っている人は多いのでは?GBRチャレンジとプラダチャレンジがチャレンジャー決勝を争うことになったら、私はどちらを応援するか決められずに困るのではないかと思っています。わが道を行くプラダチャレンジはむきになってテストをしているようですが、どんな新艇ができてくることやら。前回は豊富な資金と勢いでチャレンジャーになりましたが、今回は船頭多くして船山に登らないで開発ができていることを祈ります。

昨年はアメリカスカップにつきもののスパイ事件も起こりました。ワンワールドに雇われていた元チームニュージーランドのルールアドバイザーがワンワールドを辞めた後にワンワールドの開発データ―をオラクルに売ろうとしたり、チームニュージーランドのデータ―をイギリスチャレンジに売ろうと話を持ちかけて裁判沙汰になりました。これから新艇が続々と進水していくなか、写真撮影やスパイ行為、情報の売り買いが表にでる機会が多くなるのではないでしょうか。オークランドのバイアダクトハーバーで写真撮影をする際は疑われないようにご注意を!

(2002年1月)

文  斉藤愛子



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