●ルイヴィトンカップまで、もう待てない●


10月1日の初戦を控えて、いよいよルイヴィトンカップがカウントダウンモードに入りました。ルイヴィトンカップはアメリカスカップに挑戦する艇を選ぶための予選ですが、今回、オークランドに集まったのは6カ国9シンジケートです。前回との大きな違いは予選最初から上位に入ることが準決勝、決勝へと駒を進めるために有利なため、全シンジケートが初戦からポイントをとりにきているということでしょうか。新艇は各シンジケート2艇まで建造することができますが、別表(挑戦艇の紹介サイト)で示したように、来年になってからでないとレースが始まらないチームニュージーランド以外はすべて建造、進水を終えてオークランドに輸送をすませています。

アメリカからの3シンジケートは金銭的に裕福とされていますが、チームニュージーランドから人材が流れたワンワールドは新艇を早くから2隻建造し、オークランドで練習した時間は挑戦艇の中で一番長いものになりました。よくオーガナイズされた国際色豊かなシンジケートで日本からも脇永、早福、谷路がセーラーとして、香取が技術関係で参画しています。スキッパーのギルモアは前回ニッポンチャレンジの艇長で、カップ挑戦のベテランです。デザインチームがチームニュージーランドから移ったため、デザイン流失の疑いがかかりましたが、カップ審問委員会の結論は1点のペナルティーということで終わりました。よく運営されているシンジケートです。

同じくアメリカのチーム・デニス・コナーはまたもやアメリカスカップにやってきましたが、2隻目が7月にカリフォルニアでの練習中にバウが破損してあわや沈没というピンチで、修理に時間がかかり2隻目のオークランド入りが遅れています。スキッパーはデニス・コナーですが、実際に艇を操り、練習プログラムの中心になっているのは前回同様、ケン・リードです。前回よりは早いペースで準備をしてきましたが、前回はスターンが割れ、今回はバウが割れ、果たしてオークランドの強風に耐えられるのか、初戦が心配です。

オラクル・レーシングはキールボートの「さよなら」というアメリカ艇のオーナーであるラリー・エリクソンのシンジケートですが、ポール・ケイヤード、クリス・ディクソンを抱えながらもセーリングに使わないというもてあまし気味の人材配置です。実際に運営しているのは前回のアメリカ・トゥルー、前々回のニッポンチャレンジで舵をもったジョン・カトラーです。練習レースであまりスピードがないという印象で、どういうスタメンで初戦に登場するのか興味があります。

ヨーロッパからは5カ国が挑戦しますが、2シンジケートがくるのはイタリアです。プラダは前回の挑戦艇で、今回も手堅いプログラムで前回以上の力をつけてきています。特にセールプログラムに独特の流れがあるようです。ヤングアメリカ2隻とルナロッサ2隻を使い、テストセーリングにかけた時間も膨大でした。今回もルナ・ロッサのメロディーがオークランドに流れわたるのでしょうか。

プラダの活躍でカップ熱が高いイタリアからは2番目の挑戦シンジケートとしてマスカルツォーネ・ラティノがでます。イタリアは国中がサッカーをしのぐ勢いでルナ・ロッサの快進撃を応援していましたから、もう1つくらい挑戦艇がいたっていいだろうとモビーラインのオーナーであるオノラト氏が立ち上げました。余談になりますが、私は9月にサルジニア島で開催された470世界選手権へ行くときにモビーライン(カーフェリー)で移動し、船中でキャンペーングッズを見て1隻だけとはいえ、イルモロの建造をしたテンカラ造船所で建造、乗り手もイタリア人ばかりで集まってしまうのですからACに関する底深さを感じます。資金面で裕福ではありませんが、よくスタートラインに間に合いました。

同じく資金面で苦しく、今回だけでなく次回を合わせて考えているのはフランスのル・デフィ・アレヴァチャレンジです。フランス人は合理的だと感心しますが、デザインにかけるお金が少ないため、前回の船型から進歩させた型で2ハルを建造し、デッキレイアウトとかも前回の進歩で、リグとセールに重点をおいています。若いセーラーが多いのですが、今回は2隻を動かすだけの人数を揃えており、前回よりも大所帯です。相変わらず細いハルですが、オレンジからイエローに変わりました。470のロス五輪で銅、ソウル五輪で金、マッチレースでも活躍してきたルク・ピローがスキッパーです。

スウェーデンは曲者です。マッチレースで活躍しているマグナス・ホルムベルグがヘルムス、彼のマッチレースのタクティシャンであるステファン・ラームがタクティシャン、オリンピックのスター級で活躍したマッツ・ヨハンセンがスキッパーでストラテジストとしてアフターガードを固めています。練習レースでは良いスピードで仕上がりに満足しています。本当にカナードラダーがついているのか、初戦でチェックするのが楽しみです。シンジケートヘッドのヤン・ステンベックが8月にパリで突然になくなり、彼の望みを果たすべく、強い気持ちでまとまりを見せています。

新聞の調査によると、ニュージーランドの人々がルイヴィトンカップで勝利を望んでいるのは、意外にもラッセル・クーツ率いるアリンギチャレンジです。スイスへチームニュージーランドの主力メンバーを連れて引き抜かれていったクーツですが、見たいのはチームニュージーランドがクーツをたたきつぶす姿で、そのためにもクーツは予選で敗退してはならないのだそうです。スイス流の準備は万全なのかわかりませんが、クーツの場合、失敗したキャンペーンもありますから、今度はどちらになるのか、何ともいえないところです。一応、彼自信、準備には満足しているということですが。スイスはACボートの種ミレーターを作り、それを使っての練習もしてきました。チームニュージーランドの時は会議室に段ボールで切り抜いた部品を並べて考えたデッキレイアウトも、シュミレーターを利用して考えてきたということをアピールしたいのでしょうか。クーツいわく、フライトシュミレーターのような感じでラットを回すとボートがコンピューター制御でメンシートの引き具合とかかわる、トリムをきちんとしないとVMGが下がるなど、かなり高度なシュミレーターのようです。

ニッポンチャレンジの韋駄天と阿修羅、他多くの資材を購入してシンジケートを立ち上げたイギリスのGBRチャレンジは保守的な1号艇であるワイト・ライトニングと奇抜な2号艇であるワイト・マジックを建造してきました。シドニー五輪、アトランタ五輪で銀メダルをとったイアン・ウォーカーがまとめるチームは初挑戦になります。最初にニッポンから艇を買ったおかげで今まで参加していなかった分を取り戻せたといいますが、核になるメンバーはヨットレースの勝ち方を熟知しています。前回のスターズ&ストライプスのように初参加ながらうまさを見せてくれるかもしれません。今回はあまり野望を抱いているわけでなく、次をふまえての挑戦です。高橋、金井とニッポンチャレンジの技術陣から2名が加わっています。最初はGBRの連中にとって謎の東洋人だったかもしれませんが、韋駄天や阿修羅を見た時にイギリス人達は日本の造船技術の高さを感じ、日本からの2名も重要な戦力だと認識していました。その上をいく艇をイギリス人が建造できるのか、私が興味をもつところです。

この9シンジケートの勝者がチームニュージーランドに挑戦するわけですが、ラウンドロビンを2回行い、9のうち、1つだけが敗退することになります。残りの8は順位ごとに進み具合が違いますが、予選ラウンドで上位に入れば入るほど先の戦いが楽になるわけで、挑戦艇に選ばれた艇が挑戦する前に疲れきってしまった前回を反省しての組み合わせになりました。予選のしくみについては別表(ルイヴィトンカップの日程)をご覧ください。

9月30日に抽選があり、ラウンドロビンの組み合わせが決まります。第1レースのスタートが待ち遠しいです。

(9月23日)

マスカルツォーネ・ラティノは唯一1隻での参加。オーナーが経営するモビライン ですが、私達は470世界選手権の時に乗りました!豪華フェリーで、中でキャン ペーングッズも販売中。このモビ・ファンタジー号でACボートをエルバ島へ運んで ずっとエルバ島で練習を重ねていたそうです。私はまもなくオークランドへ行きます ので、次からは現地の写真です。お楽しみに!



photo by Prada Challenge

プラダ、アリンギ、ヴィクトリー、GBRは2隻目を皆航空貨物で運びました。写 真はプラダのルナロッサですが、ビニールカバーをして船型が見えないようにし、イ ギリスの貨物会社が所有するAntonov 124-100 機で運びました。

文:斉藤愛子

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